安倍元総理殺害事件を過去の議員殺害事件の判決事例から見る - 山上容疑者に対し死刑を求める声も
2022-07-13 カテゴリー:日本Photo by Unknown author (licensed under CC0 1.0)
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安倍元総理の悲報を受け、犯人の供述などが明らかになってきており、要人暗殺の罪はどの程度重いのか、安倍元総理を熱狂的に支持する層からは極刑を求める声などが聞かれる。過去の要人暗殺の例を参照してみる。
浅沼稲次郎暗殺事件
1960年10月12日に東京都千代田区の日比谷公会堂で開催された自民党・社会党・民社党3党首立会での演説中の浅沼稲次郎日本社会党中央執行委員会委員長が17歳の右翼少年・山口二矢に刺殺された事件。犯人の山口は事件の3週間後の11月2日夜、東京少年鑑別所の単独室で自殺。
丹羽兵助刺殺事件
1990年10月21日自由民主党所属の元衆議院議員(12期)愛知県議会議員(2期)の丹羽兵助が名古屋市内の陸上自衛隊駐屯地で、統合失調症で入院から一時退院中だった男に首を刺され、翌月に亡くなった。犯人は精神病院へ再入院。
山村新治郎刺殺事件
1992年、自民党訪朝団団長として北朝鮮への訪問を翌日に控えた4月12日、自宅にて精神疾患を患った24歳の次女に出刃包丁で刺され殺害された。次女は心神喪失により責任能力なしと判断され不起訴となるが、4年後に自殺。
石井紘基刺殺事件
2002年10月25日、民主党の衆議院議員・石井紘基が、世田谷区の自宅駐車場において柳刃包丁で左胸を刺され死亡。2004年6月18日、東京地裁で無期懲役の判決が言い渡され、判決では被告が主張する「金銭トラブル」という動機を信用することができないとした。2005年11月15日、最高裁で無期懲役の判決が確定。
長崎市長射殺事件
2007年4月17日午後7時51分、遊説をしていた伊藤市長がJR九州長崎駅付近にあった長崎市大黒町の自身の選挙事務所前に到着。スタッフが記者らに市長が帰ったと告げた直後の午後7時51分45秒ごろ、銃撃された。2008年5月26日に長崎地方裁判所は、「選挙を混乱させるなど民主主義の根幹を揺るがした」と指摘し、死刑判決を言い渡した。2009年9月29日、福岡高等裁判所での控訴審は一審判決を破棄し、改めて無期懲役が言い渡された。選挙期間中の現職市長が射殺されるという特異な事件で、被害者1人での死刑の適否が最大の争点となった。死刑を回避した理由について松尾昭一裁判長は「被害者が1人にとどまっていることを十分に考慮する必要がある」と指摘。そのうえで、「民主主義に対する挑戦であるが、動機は被害者に対する恨みであり、選挙妨害そのものが目的ではない」と判断し、「死刑選択は躊躇せざるを得ない」と結論づけた。
過去の例では無期懲役
以上過去に政治家が殺害された事件について、犯人が自殺したケースを除けば、石井紘基刺殺事件、長崎市長射殺事件共に被害者1名への殺人に対して無期懲役が確定しいる。
計画性は最も悪質
今回の安倍元総理の殺害事件は、社会に対する影響・選挙妨害・銃器密造・銃刀法違反・計画性・明確な殺意・殺害の実行・不明瞭な動機が挙げられる。計画性について考えた場合、銃器を自ら製造しており、しかも殺傷能力のある法律で禁止されている武器である。計画性という意味では最も悪質と考えられる。ホームセンターであらかじめ包丁を購入しただとか、被害者を殺害するために綿密な行動計画を立てていたというレベルではない。
1議員と影響度
社会に対する影響という意味では日本で最も影響が高い人物の一人だということは間違えが無いものの、役職としては一般議員であるため、特段どの程度加味されるかは未知数だ。動機については私怨によるものとされているが、容疑者の母親と宗教団体との関係性について安倍元総理との因果関係が全くない以上、いわゆる身勝手な犯行というしかなく、情状を酌量する部分が見当たらない。
無期懲役か死刑か
過去の例を見れば、無期懲役というところになるが、死刑判決が出るのかどうかが注目される。元検事の落合洋司弁護士は長崎地裁の第一審の死刑判決を例に、死刑の可能性はあると指摘している。1人の殺害に対しての死刑判決として、画期的な判断になるものの、計画性とその悪質性、身勝手な動機などについて司法がどのような判断をするのだろうか。国民の怒りは収まる気配が無い。